虫歯治療

どうして虫歯になるの?

歯が痛い!もしかしたらそれは虫歯かもしれません。
虫歯は、いきなり歯に穴があく病気ではありません。歯の成分が徐々に溶け出し、やがて歯に穴があいて虫歯になります。虫歯は、口の中に存在する虫歯の原因菌(主にミュータンス菌)が作る酸が歯を溶かし、やがて穴があいてしまう病気です。原因菌である細菌は、まず歯に付着して歯垢(プラーク)を作り、食べ物に含まれる糖質を使って酸を作ります。この酸が、歯の成分であるカルシウムやリンを溶かします。歯に歯垢(プラーク)が残ったままでいると、酸がさらに作られて脱灰が進行し、やがて穴があいてしまいます。歯に穴があく一歩手前の状態は「初期虫歯」と呼ばれていますが、この状態であれば、削らすに修復することができます。虫歯が進行して、エナメル質(歯の表層)に小さな穴があいてしまった状態が「虫歯」です。
放置すると、そこから象牙質、神経(歯髄)へと内部へどんどん進行して、やがて痛みも激しくなります。初期虫歯の状態は痛みもなくわかりづらいため進行してから受診されることが多いです。症状が無くても「虫歯」始まっている可能性があります。

虫歯の原因

虫歯の原因は、細菌、食物、お口や歯の状況、時間といわれています。1960年代にDr.Keyesは細菌、食物、歯質(宿主)の3因子が重なる条件ではじめて虫歯が発生するという、「Keyesの輪」を提唱しました。その後、Dr.Newbrunにより時間が加えられ「Newbrunの4つの輪」が出来ました。もちろん個人差、年齢などによって円の大きさは変わってきます。

  1. 細菌 – 虫歯菌の数や種類
  2. 食物 – 糖類(主に砂糖)の摂取状況、粘着性
  3. 宿主(歯質) – 歯の構造、歯並び、唾液の量と質
  4. 時間 – 細菌が作る酸にさらされる時間

※また、近年歯ぎしりやくいしばりによって歯に力がかかり、マイクロクラック(ひび)が入ってそこから虫歯になるという説もあります。

虫歯になりやすい場所

  • 奥歯の噛む面
  • 歯と歯の間
  • 歯と歯肉との境目
  • 歯が重なっている所
  • 歯の根の部分
  • 詰め物かぶせ物の境目

特に詰め物やかぶせ物の境目は、拡大してみると全く適合しておらず、歯垢がとてもたまりやすい状況になっている場合があります。しかも虫歯が詰め物やかぶせ物が入っているため肉眼でもレントゲン写真でも見えづらいく発見が遅れてしまいがちです。
また、親知らずも手入れが難しく虫歯になってしまうことが多いです。

自分でできる虫歯診断!!お口の中を鏡で見てみてください。

  • 歯の溝が黒く(茶色)なっている。
  • 歯の表面がざらついている。
  • 白濁してきた。
  • 冷たいもの少しがしみる。

この程度の虫歯は削って治すのではなく、再石灰化させて治すことができます。
この程度で発見できたらラッキーです。早めにフッ素の応用などの予防処置を受けて進行を防いでください。放っておくと進行してしまいますから、、、
(レントゲン等で検査を行い現在の進行状況を確認し、診断する必要があります。)

  • 穴が空いている
  • 食べ物が挟まる
  • 冷たいものがしみる
  • 詰め物がとれて黒っぽい

これくらいの虫歯は大きさなどにもよりますが、修復治療を行う必要があります。虫歯の部分を削り取り詰め物やかぶせ物で修復します。虫歯が小さいほど削る量、通院回数、治療費用は少なくなります。これらの症状があるようでしたら早めの受診をお勧めします。

虫歯の進行段階と治療法

虫歯の進行段階や箇所によって処置方針は分かれます。大まかに言って白いプラスチックを入れるか型取りして部分的もしくは全体の被せ物を作るかです。
虫歯の治療で当院が重要だと考えていることが2つあります。
1つ目は1度治療したところは極力2回目の虫歯にならないようにすること。
1度治療をした箇所が再度虫歯になると1回目に治療した部分は全て取り除いた上で虫歯を削って治します。つまり治療を繰り返すと見た目上は治ったように見えても着実に歯は少なくなっていきます。
それを繰り返すと歯の寿命は短くなっていきます。治療すればするほど口の中は悪い方向に進んでしまうというジレンマが生じます。

つまり再度治療をしないように治療をすることが歯の寿命を考えると重要なことになります。
では治療をした歯はどうして虫歯になるのか?
よく歯医者に行くと『歯磨きが足りなくて虫歯になりましたね』と言われることが多いのではないでしょうか?

果たして本当にそれだけが原因なのでしょうか?
イメージになりますが歯医者にいって虫歯治療をするのは、過去に治療したところの再治療が多くを占めていると感じます。私だけではなくて患者様もよく考えてみるとそうではないでしょうか?このことからも言えますが、1度治療したところは治療をしていない箇所よりも虫歯になりやすいということが言えます。なぜこのようなことが起きるのか?それは虫歯のリスクが高くなるような治療がなされているからです。1度治療したところが再度虫歯になるのは、

  1. 治療した詰め物や被せ物と自分の歯の段差や隙間が大きい
  2. 入れたものの接着力が弱く時間が経つと実は外れかかっている
  3. そもそもの虫歯の取り残しがある

がほとんどです。

①に関しては拡大視野で丁寧に治療することや、良い材質を使うことによって防ぐことができます。


詰め物の適合を良くするために行なっているハチマキテクニック

②に関してはラバーダム防湿という処置が大切になってきます。歯が濡れていたり汚れていたりすると最初は詰め物や被せ物が接着しているように見えますが、その接着力は弱く時間が立つとそこから虫歯になるリスクがあります。
ラバーダム防湿をすることによって唾液や血液や呼吸の呼気から歯を守り完璧な乾燥状態にすることができます。その条件下で接着すると飛躍的に接着力は増して今後虫歯になるリスクを下げることができます。
日本の歯科治療では重要性が歯科医師側にもあまり伝わっていなく使用頻度が低いのが現実です。


日本でのラバーダムの使用状況


米国でのラバーダムの使用状況


ラバーダム防湿は歯科治療においてかかせない

③に関しては虫歯を取り残してその上から詰め物をすると残った虫歯が進行します。また虫歯に接着はしないためそこに汚れが溜まり虫歯を新たに作る可能性もあります。虫歯を染め出して可視化する『う蝕検知液』というものがあり、それに染まった部位を徹底的に除去することにより治療において虫歯の取残しは防ぐことができます。


う蝕検知液にて染め出しを行なっている

2つ目の当院が虫歯の治療で重要だと考えている事は、健康は歯を無闇に削り過ぎない事です。 歯を削ると2度とその歯は戻ってきません。削った分だけ歯は少なくなっていきます。虫歯のたびに歯を大きく削ってしまうと、歯がなくなってしまうのが早くなる事は想像がつくかと思います。その時その時に状況に合わせて最小限の削る量にしておくとまた虫歯になったとしても歯が多く残っているので虫歯治療にトライできる回数が多くなるのです。
では歯を削る量を抑えた治療とはなんなのかと言う話になります。虫歯の治療は大雑把に分けると詰め物と被せ物になります。詰め物(レジン)は虫歯になっている部分だけを削ります。つまり必要最小限の削る量ですみます。被せ物は虫歯だけではなく健康な歯も削って被せ物を作れる形に整えます。被せ物も薄すぎると割れたり、適合が悪くなってしまうので被せ物の厚み分だけ歯を削る必要があります。先の話だと前者の詰め物(レジン)が一番いいのではないかと思われるかと思います。しかしこの治療での落とし穴があります。虫歯だけを削って残った部分がとても薄くなっていると、詰めても残った薄い歯が折れてしまうことがあります。これでは治療したとしてもすぐにやり直しになってしまいます。このような時は詰め物(レジン)は適応範囲外になります。また詰め物(レジン)は口の中で直接形を作るので歯の形が部分的になくなってしまった場合は強度面と噛み合わせの観点から適応外になります。


セラミックの被せ物の治療終了時

治療費用 フルジルコニアクラウン9万円×3本
期間 1か月半(治療回数4回)
リスク 歯をしっかりと削る

そのような時は被せ物が有効になってきます。
被せ物は健康な歯を削りますが、強度のあるセラミックや金属で作りますので、詰め物(レジン)よりは持ちが長いことが多いです。


セラミックの部分的な被せ物の治療終了時

治療費用 プレスインレー5万円
期間 2週間(治療回数2回)
リスク 歯がしみることが稀にある


白い詰め物(レジン)で虫歯を治療

治療費用 ダイレクトボンディング3万5千円
期間 1日(治療回数1回)
リスク セラミックよりは削れやすい

詰め物(レジン)の適応外であるが歯がそこそこ残っていることもあります。その時は従来であれば大きく削ってフルクラウンというものを作っていました。しかし昨今セラミックの接着技術の向上により大きく削らなくてもしっかりと接着することが可能となり、歯を削る量を少なく済ませることが可能となりました。これをテーブルトップクラウンと言います。


テーブルトップクラウン


テーブルトップクラウンの被せ物の治療終了時

治療費用 テーブルトップクラウン9万円
期間 1か月(治療回数3回)
リスク 被せ物の接着が難しい


テーブルトップクラウンの歯を削った後
削る量が少ない


フルジルコニアクラウンの歯を削った後
削る量がそれなりに多い

またもともと歯が大部分なくなっている時はフルクラウンという被せ物を入れることになります。被せ物はたくさん歯を削るので悪いというイメージをお持ちになる方もいるかと思います。しかし適切な手技を踏んで、技術の高い技工士(被せ物を作成する専門家)に依頼をすることで虫歯のリスクを低くすることができて予知性が高くできます。
これらの治療の利点・欠点を天秤にかけて治療の選択をするということになります。

C0:脱灰

歯の表面のエナメル質が少し溶けて、濁りが見られる状態。痛みなどの自覚症状はありません。正しいブラッシングによって治癒することがあります。

C1:エナメル質の虫歯

エナメル質が溶けて歯の表面が黒くなった状態。まだ痛みなどの自覚症状はありません。虫歯部分を削ってプラスチック(レジン)を詰めて治療します。
または虫歯とそれ以外を削って型取りをして部分的な銀歯を被せます。

C2:象牙質の虫歯

エナメル質の内部の象牙質まで虫歯が進行した状態。冷たいものや甘いものを食べると歯がしみて痛みます。虫歯になっている箇所によって治療の選択肢が変わります。歯の噛む面や表や裏面が虫歯になっているときはプラスチック(レジン)を詰めて治療が簡単にできます。歯と歯の間が虫歯になっているときは虫歯部分とそれ以外を削って部分的な銀歯を入れることが日本では一般的です。より精度の高い白いプラスチック(ダイレクトボンディング)もあります。精密に治療することで本来難しい歯と歯の間の虫歯も削る量を最小限で治すことができます。
また上記の治療の適応外なほど虫歯が広範囲に及んでいる時は部分的もしくは全体を削る被せ物があります。

C3:神経が出てしまった歯

虫歯が神経にまで達した状態。何もしていなくてもズキズキと激しい痛みを感じるようになります。ほとんどの場合、神経を取り除く治療(根管治療)を行い、被せ物(クラウン)を被せて機能を回復させます。 しかし神経に達している虫歯でもMTAセメントを用いることにより神経を温存できることも少なくありません。これを断髄(ダンズイ)と言います。神経を取ると歯の寿命は短くなってしまいますが、神経を残すことでその寿命を長くすることができます。


初診時


テーブルトップクラウン


MTAセメントにて神経(歯髄)を温存

治療費用 MTAセメントによる断髄4万円
期間 1日(治療回数1回)
※そのあと被せ物か詰め物は別で治療が必要
リスク 歯が部分的に黒くなることがある

C4:歯根に達した虫歯

神経が死んで、歯根まで虫歯が達した状態。ひどい場合は抜歯をして、インプラント治療やブリッジ、入れ歯治療を行う必要があります。
またひどい場合でも残す方法はあります。歯根挺出(エクストリュージョン)と言い、矯正して健康な歯を歯茎の上まで引っ張りあげてあげる処置です。
矯正した後に歯茎と骨を整える手術(クラウンレングスニング)を行うことにより通常では保存ができない処置でも保存して被せ物をすることができます。


虫歯で歯がほとんどなくなっていた歯を挺出と外科処置で温存


被せ物を入れる日
通常であれば残せない歯も問題なく残せる

治療費用 強制による挺出、クラウンレングスニング5万円
期間 4ヶ月(治療回数6〜8回)
※そのあと被せ物は別で治療が必要
リスク 歯を残すために外科処置が必要